刈田スタディオ KARITA AQUATIC INSECTS LAB
2010年01月29日(金)

消えゆく川音 その2


近頃、古い小橋が立派な橋に付け替えられ、同時に付近の護岸も作り直されました。

それなのに、なんと以前と同じ3面コンクリート護岸のままでした。

せっかく国土交通省が、「多自然川づくり」をしろと、お達しを出しているというのに・・・悲しいことです。結局この橋から下流へ約300メートルは、三面護岸になっている。

川は、元々非常に性能の良い浄水場でもある。石のゴロゴロした、早瀬や平瀬には、見た目流水のあるところだけでなく、その底石の下にも水流があり、バクテリアから、様々な水生昆虫などが棲みついている。

その代表ともいえる水生昆虫は、ただ魚の餌になるだけじゃない。落ち葉から始まる地球の食物連鎖にたいへん重要な役割をしている。つまり、落ち葉や水中の有機物を食べて育った水生昆虫は、羽化して、陸上の昆虫や動物のエサとなる。川の栄養分が、陸上生物に繋がる。

一例として、春は早くから水生昆虫の羽化がもっとも多いシーズン。これは鳥類の繁殖シーズンに重なり、他のエサの少ない時期でもあり、鳥類の存続に非常に重要である。

鳥が水生昆虫を食べて増えれば、農作物への害虫被害を減らす役割も大きくなる。

「食料増産」です。

また、目に見えない現象で難しいけど、有機物が、生物分解を繰り返されることによって、最終的にミネラル分が作られる。それが海へもたらされれば、植物プランクトンや海藻を育てる栄養となる。その先は、動物プランクトンから、魚へ。結局、落ち葉は、川を経てマグロにもなる。

この三面護岸には、魚どころか本来いるべき水生昆虫さえもまったく生息出来ない。

防災面では、三面護岸から発生する鉄砲水(高速流)が、人を飲み込む被害も例を挙げればきりがない。(近年特に痛ましい例としては、2008728日 兵庫県神戸市の都賀川で雷雨による鉄砲水にて10人以上が流され4人がなくなった)