2018年01月11日(木)

奥尻島の異変


2017年晩秋、新聞各紙に北海道南西部にある奥尻島の漁獲高が年々大きく減り続けているという報道があった。1993年震災からの復興期にたいへんなことである。
この島は、ウニ、アワビのほか、沿岸漁業が盛んに行われ、かつては宝の島とも呼ばれていた。
奥尻のように陸地から離れた島の沿岸漁業は、海流の状態に大きく影響をうける。 奥尻島にやって来る海流は、九州の南西で黒潮から分かれた対馬海流である
北海道の海といえば、豊かな海でうまい海産物が豊富に採れるというイメージがある。確かに、北海道へ北から流れてくる親潮は、「魚類を育てる親となる潮」という意味で、ミネラル豊富な海流である。
ところが、対馬海流というのは、元々南西諸島を流れていた海流で、親潮に比べるとかなり透明度が高い・・・つまりミネラルが少なく、その結果植物プランクトンも動物プランクトンも増えにくい。
しかし、九州には、有明湾があった。その広く浅い汽水域では九州の山々から落ち葉としてもたらされる栄養が分解されてミネラルができた。すると、ミネラルを得て繁殖する植物プランクトンが発生して、対馬海流は、ミネラル豊かな海流に変貌できた。もちろん、日本各地からのミネラル供給もある。それらが、日本海を通って奥尻島まで届いていたのだ。
今日、日本全体の現状をみれば、山の広葉樹林はどんどん切られ、河川は、防災と称してコンクリートで覆われ、河口の干潟は埋め立てられてしまった。
本来、山から供給される落ち葉は、林床や河川生物によって分解され干潟を経て効率的にミネラルに変換され海洋生物全体に食物網が繋がる根源になっていた。
今は、その大事な落ち葉が、ダムの底で腐るか、分解されないまま外洋に流失してしまう時代。
防災と称して行われる河川改修は、山地流の雨水を滝のような急流に変えて平地の本流へ一気に流し込み、洪水を作る。結局、平地の本流も防災工事で堤防を一層高くし続けなければならなる。
政府は、養殖によって種苗をどんどん生産放流して、漁業を支えるようなことをいっている。どれほど、種苗を放しても、そのエサが足りないのである。2018年こそ、広葉樹林の保全、本当に有効な防災事業とあわせて、生物力を活かせる河川環境を構築出来るように向かう一歩になって欲しいものです。